習作『縛り首は吸血鬼か』シナリオ制作備忘録
~ストーリーについて語る編~
○ストーリー
2人の男が縛り首について話している。森を抜けた崖の下に、1年ほど前に吊るされた縛り首のことだ。
盗賊だか海賊だか、とにかくそのあたりのならず者の成れの果てだと言われている。
何のためにあの場所で、何者がやったのか、森を挟んだ2つの村の住民は詳しいことは何一つ知らなかった。
賊同士の仲間割れか、自警の手によるものか、はたまた聖北教徒の手によるものか?それともクドラ教の?
珍しいことなど何もない村では、崖の下の縛り首の存在に気づいてしばらくは様々な憶測が飛び交ったが、
それから1年も過ぎ、縛り首が話題に上ることは稀になっていた。
そんなある夜、東の村に暮らす男が「あの縛り首が森から出てくるところを見た。1年前と同じ姿で」と言い出したのだ。
しかも、崖に血の跡が合ったことから、「あの縛り首は吸血鬼だ!」と主張する。
話を聞いていた男は、最初こそ嘲笑ったものの、男の青い顔を見て興味が湧いたようで、他の者にも縛り首について
聞いてみることにしたのだった。
西の村の娘が奇妙な体験をしたという。男はさっそく話を聞きに行くことにした。
東の村の伯母の家へ行った帰りに、刃物を持った怪しげなローブの男達に追いかけられ、縛り首の崖で腕を負傷して
殺されそうになっていたところを、突如崖の下から現れた人物に救われた、と言うのだ。
さらに奇妙なことに、その人物は娘を助けたにも関わらず逆に「助かった」と娘に感謝したらしい。
どうやら東の村の男が言っていた崖に残されていた血の跡はこの娘とローブの男のものだったようだ。
娘を救った人物と、森から出てきた人物はおそらく同じだろう。
男の「縛り首は吸血鬼だ」という主張を一旦信じてみるとすると、この人物は吸血鬼であり縛り首で、崖の下で長い間
流血を待っていたというのか?ではローブの男達がこの人物を探していたのは?容姿を知っていたのは何故か?
娘の話では、もうローブの男達から話を聞くことは不可能であろう。
残るは崖の下から現れた謎の人物――この者の話を聞くことができれば、すべての真実は明らかになるのだが――
この冒険者(娘がそうではないか?と言っていた)は一体どこに居るのだろうか?
冒険者は崖の下に居た。
依頼でとある組織のアジトに潜入し、潜伏に失敗して追われる身となってしまったため、縛り首のあるこの崖にひっそり
空いた狭い洞穴に身を潜めていたのだ。
つまり、男と娘の話の真実はこうだ。
森から出てきた人物はもちろん縛り首などではなかった。
ローブの男達に追われて崖下に隠れていた冒険者が、偶然巻き込まれた娘によって、彼らに奇襲するチャンスを得、
始末することができ、依頼の失敗を挽回することができそうだ、だから「助かった」とこの者は言った。
このように、全てを俯瞰できたならば、不思議な事は何もない、すべて偶然にして成るように成っただけの話だ。
だが小さな田舎の村に住む男や娘は、もはや知ることはないだろう。
話を聞いていた冒険者もはたして真実にたどり着いただろうか?
すべてを知ることが出来るのはあなただけだ。
○縛り首の正体とは?
すくなくとも人間ではないです。断言します。
シナリオ内でも明らかにこれは普通の人間の死体ではないな、という描写を見ることが出来ます。
具体的には画面に縛り首が表示されてる状態で「浮遊」キーコード発火です。
どのシーンでも見れますが、冒険者の顔のメニューカードが出てる時が一番のおすすめ。
他にも縛り首は色んなキーコードに対応しているので、縛り首と存分にイチャイチャすることが出来ます。
○PCが吸血鬼である必要は?
ぶっちゃけ、まっっったく無いですね。吸血鬼クーポンにも対応していませんし、あくまで「向け」ですから。
縛り首と同じ形状(頭髪のある人型)であれば何でもいいんですね。吸血鬼クーポンには対応してないくせに、
容姿を表すクーポンとしてエルフクーポンには対応していたりします。
吸血鬼PC向けとしたのは、このシナリオは「縛り首=吸血鬼なのか?」という謎を解き明かしていくストーリーですが、
本当の狙いは「縛り首=PCではないか?」と一瞬でも思わせることです。
そのために様々なクーポンを使ってPCの容姿を描写し、縛り首が疑われているのと同じ吸血鬼のPCでプレイして貰えると
作者の思惑通りになって、とっても嬉しいな!というだけのことです。
シナリオ外から騙しにかかっているので、非常に性格の悪いことをしてますね。ごめんなさい。
全部無視して非吸血鬼PCで容姿クーポンまったく無しでやっても問題ないですけどね。
どれだけクーポンつけてるかによって印象が変わってくるシナリオになってるんじゃないかな~と思ってるので。
PCのイメージが明確に有り、わざわざ細かく容姿についてのクーポンをつけているプレイヤーが可愛がっているであろう
思い入れの強いPCほど、縛り首にされた人物の容姿と類似性が高まり、騙しやすくなるという悪どいシナリオですから。
ちなみに一番容姿描写が長くなるのは「_秀麗」で「巨乳」「髪:灰髪」の「長髪」で「眼の色:黒白眼」のPCですね。
すごく吸血鬼っぽい!
あと個人的に好きなシナリオで『人非人たちの諧謔曲』という人外推奨シナがあるんですが、ただの人間で行ったときが
一番好きでしてね・・・!人外推奨・・・!すごくいいですよね、一通りの人外種族でプレイした後の、人間でのプレイ・・・
ちょっとそういうのをやってほしかったってのもあります。
人外に対する、冒険者に対する偏見・・・そういうのすごいあ~~~~刺さる~~~~~!!
○縛り首とPCが似ているのはなぜ?
話を聞いていた男が言うようにすべて偶然・・・なのか、村の男の記憶力が低いのか、恐怖による思い込みか・・・
実はPCの生き別れの家族とか、縛り首は他人の姿を模倣する生き物だったとか、自分に似た人は世界に3人いるとか
可能性はいろいろありますが、まぁとにかく似ていたようです。
PCが縛り首を見て「誰の目にも触れず、ひっそりと朽ちていくのと、このように崖下で晒し者にされ続けるのとでは、
どちらが『マシ』か――」なんて思うように、さっくり人が殺せるこのPCは1つ足を踏み外せば絞首台に送られ縛り首に
されてしまうような人物です。
実はあの崖の時空が歪んでいて、未来の自分と対面した、なんてちょっとぶっ飛んだ展開もあり・・・いやないない。
○あの情報カードってなに?
あれは渾身のダジャレだったんじゃ・・・
ツキがなくてツキがなかったけどツキが昇ったというわけだ!ガハハ!というな・・・
ホラーっぽく始まってダジャレで終わるギャグシナリオのつもりだったのだが。