習作『縛り首は吸血鬼か』シナリオ制作備忘録
~WirthBuilder の使い方を覚える編~
○発端のネタ
少女が悪者に追われて地下に追い詰められ、負傷し、その血しぶきが、鎖につながれていた死骸に降りかかる・・・。
すると死骸は動き出し悪者を蹴散らして少女を助ける。それは少女の血によって目覚めた封印されし吸血鬼だった。
・・・みたいなシチュエーション好きだなー!!
そうだ、別に地下でなくても日の当たらないところなら野外でもOKなんじゃない?
日の当たらない洞窟じゃわりとありそうだし、陽の当たらなそうな、崖下・・・崖下に吊るされた縛り首が吸血鬼だとしたら?
って感じでそこからストーリーをつけていくことにしました。
○とりあえずシナリオ作りに着手してみよう
じゃあビルダーの使い方、機能を覚えてみよう!何が出来るか考えてみよう!
今回は雰囲気重視の読み物シナリオが作りたかったので、プレイヤーカードを画像で隠すことが出来る1.60を選びました。
まずは「フラグ」の使い方。
フラグがTRUE状態かFALSE状態かでメニューカードや背景の画像を表示したりしなかったり出来るらしい。
▶じゃあ基本となる背景に、状況によって画像(セル)を付け足してみたりしよう!
▶メニューカードもいっぺんに並べるんじゃなくて順々に開示していこう!
▲フラグで表示非表示した画像は「画面の再構築」をしないと反映されないよ!
次に「ステップ」の使い方。
フラグはTRUE/FALSEの2パターンだけど、ステップはパターンがたくさん作れるらしい。
ステップに設定した値だけ分岐が作れるみたいだ。こっちはメニューカードと画像に関連付けられない。
▶じゃあ物語を3段階の構成にしてみて、進度によって0、1、2、3のステップを作ってみよう!
▶ステップを設定することで、どの段階でどのメニューを選んでも、ちゃんと同じ段階に戻れるようにしよう!
もう一つの「フラグ」と「ステップ」の使い方。
どうやらフラグの「TRUE/FALSE」を「男/女」「長い/短い」というように、任意の文字に変更することが出来るらしい。
ステップの値も同様に好きな言葉を入れられるようで、ここで設定した言葉をメッセージに引用表示が出来る!
しかもシナリオをプレイしている冒険者の名前を表示する指示も入れられるらしい!すごい!
「分岐」の使い方。
色んな要素を判定してイベントの分かれ道を作る。
今回使ってみたのは「選択メンバ」と「クーポン分岐」と「ステップ多岐分岐」。
「選択メンバ」はパーティの中から誰か1人を選ぶか選ばないかで分岐する。
選んだメンバーで分岐ではなく、選んだか選んでないかで分岐するので、忘れないようにツリーを2つ繋げなきゃいけない。
▶今回はシナリオの冒頭でパーティの誰か1人を話者に選出してもらうために使用。
▶選ばれた人に、シナリオをクリアすると自動的に消滅する「:」から始まる時限クーポン「:崖の下に居る」を配布。
▶以後このクーポンを利用して再び選出した人を呼び出すことが出来る!
「クーポン分岐」は指定したクーポンを持っているか持っていないかを判定して分岐する。
判定する範囲には「現在選択中のメンバ」「パーティ中の誰か一人」「パーティ全員」「フィールド中の誰か一人」
があり、これを間違えると悲劇が起こる。
▶「パーティ中の誰か一人」から、事前に配布した「:崖の下に居る」を判定のためのクーポンに指定して、
冒頭で決めた話者を再び呼び出すのに使用。
▶そうだ!シナリオに冒険者の容姿を反映させてみよう!
まず容姿に関するクーポンをググってメモ帳にリストを書き出す。
よりマイナーなクーポン、メジャーなクーポン、初期クーポンの順でリストを並び替えておく。
▲ツリーの上から順に判定していくから、一番上に「_秀麗」「_醜悪」などの初期クーポンがあると
「童顔」や「女顔」といったクーポンは後からいくらつなげても判定されないぞ!悲しい!
▶先にステップを作成して、ステップ値を、反映させたいクーポンの数だけ増やし、対応するクーポンの描写を入力。
▶リストの上から順にクーポン分岐のツリーを作る。
クーポン「髪:金髪」を所持している場合、ステップの金髪について描写した値に「ステップ変更」します。
クーポン「髪:金髪」を所持していない場合、クーポン「髪:銀髪」で「クーポン分岐」・・・
これをクーポンの数だけ繰り返すよ~
▶「選択メンバ」で指定した人にこの「クーポン分岐」→「ステップ変更」をすると、
メッセージやセリフでステップを引用した時、選択メンバの容姿をストーリーに反映させる事ができる!すごい!
▲あっ!どのクーポンも持ってない時の描写はどうしよう!?
▶ステップの値は後から変更可能なので、「あの」とか「同じ色の」とかを増やして、状態初期値に設定しておく。
ステップ引用の後に文章が続かないなら空欄でOK。
「ステップ多岐分岐」は指定したステップの値それぞれの分岐が用意できる。
▶既に作っておいた0、1、2、3の4段階の値を持つ「進度」のステップをイベントツリーのシナリオ進度にあわせて
「ステップ変更」しておく。
▶進度=1、進度=2、進度=3というようなそれぞれの分岐を作って、 シナリオの進度によって背景を変更するようにした。
「パッケージ」の使い方。
大量のクーポン分岐ツリーは、イベントビューで作るとすごく長くなって見づらくなるので、「パッケージ」を作って
それに入れて「パッケージの呼び出し」でイベントツリーに繋げるとすごくコンパクトになって見やすくなる!
しかも同じパッケージを何度も呼び出しできるから、複雑でめんどくさいツリーを何度も作らなくていい!便利!
▲てゆうかパッケージに入れないとその後にイベントを繋げるのがめちゃくちゃめんどくさくなるよ。
分岐項目が多い分岐判定ツリーはパッケージ化必須だよ。
※追記 この時点ではまだツリー(スタートコンテント)がたくさん作れる事を、作者は知りませんでした。
そんな体たらくでもシナリオは作れるからカードワースすごい。
パッケージをツリーに組み込むには「パッケージへのリンク」と「パッケージの呼び出し」の2つがある。
「リンク」はパッケージの処理が終わると、そのまま全部の処理が終了する。
「呼び出し」はパッケージの処理が終わると元のツリーに戻ってきてツリーの続きの処理をする。
リンクはフッター、呼び出しは挿入のイメージ。 「スタートへのリンク」「スタートの呼び出し」も同じ。
○機能を覚えたら
「フラグ」「ステップ」「分岐」「パッケージ」
とりあえずこれだけ覚えればシンプルな読み物シナリオを作るにはもうばっちり!?!??やばい!!
カードワースすごい!!ここまで出来てきたらもう完成まですぐそこじゃん!?
ってなるじゃん???めっちゃテンション上がるじゃん??
そんな時に初歩的なミスするのね。書き連ねるよ。
・「画面の再構築」を忘れる。(アイコンすっごい地味なところにあるよね)
・クーポン分岐が「パーティ中の誰か一人」にしなきゃいけないのに「現在選択中のメンバ」になってるよ。
・「クーポン『〇〇』を所持している」「クーポン『〇〇』を所持していない」が逆になってるよ。
・画像にフラグ設定し忘れ。(途中で画像追加したら忘れたんだね)
・画像を編集して上書きしたら透過が無効になったよ。(なんで?)
・なんか色々してたら画像間違えてたよ。
・誤字だよ!!!!
・なんか選択肢が変な言葉になってるよ。
・出来たか確認する時は3回はやらないとダメだぞ。
1回だけだと偶然の一致とか、2回目は動かなくなるとか、何故か2回目だけ動くとかあるぞ。
そのへん踏まえて冷静に応用編へ。
○複数の「フラグ」を組み合わせて背景描写をより複雑にする
進度に合わせて背景を変更するために、「進度0」~「進度3」のパッケージを作ったよ。
あとメッセージ送りの時にメニューカードを非表示にするための「話すよ」のパッケージとか色々用意します。
それぞれの状況に合わせて最大8つのフラグの組み合わせで背景を作るよ。
「ステップ多岐分岐」や、メッセージの前に組み込むよ。
▲そんなに細かく組み合わせなくてもフルサイズの画像を用意すればいいんじゃないの?
▶この細かく分けた画像には意味があるんじゃ。次に説明することのためじゃ。
○「フラグ」を使ってアニメーションを作る
これは作ってる途中に思いついて急遽やってみたことなんですが、
シナリオ開始直後の強烈な掴みになったみたいでやってよかったなーと思いました。
フラグで表示した画像セルは再構築しないと反映されないわけだけど
フラグ
画面再構築
フラグ
画面再構築
って並べたところで一瞬で処理されちゃうので、間に「空白時間挿入」ってのを入れます。
すると順番に表示されるようになるのですね。
根気よく頑張ればカードワースでパラパラ漫画劇場が出来ますね。
縛り首と炎は同じ空白時間を繰り返してるだけですが、女が走る動きは効果音に合わせて表示秒数変えてます。
既存の足音に動きを合わせるのは大変だけど、単一の足音の効果音があれば画と音を合わせるのが楽かも。
○「ステップ代入」を使う
ストーリーを打ち込んでる内に、二度目の容姿についてのセリフが出てきました。
が、一度目とちょっと言い回しを変えたいな、と思いました。
でも同じクーポンについてなのにまたクーポン分岐してステップ変更するのめんどくさいな~!ってそんな時に!
▶選択メンバの髪の色を反映するために作った「頭部特徴A」のステップを複製して「頭部特徴B」を作ります。
▶「ステップ代入」で「頭部特徴A」の値を「頭部特徴B」を代入します。
するとまたクーポン判定のツリーを作らなくても「頭部特徴A」と「頭部特徴B」を同期する事ができます!
これでお手軽に同じクーポンに対応したステップ引用の言い回しを複数用意できます。楽しい!
▲例えば同じ「髪:金髪」クーポンに対応する表現で「金髪」「金色の髪」「金糸」のように、
出てくるたびに表現を変えたり、口調別に言い回しを用意したりするのが楽になります。
○「空白時間挿入」を使う
単純に時間経過を表すのが一般的な使い方ですかね。
今回のシナリオで時間経過とアニメ以外で「空白時間挿入」を使ったシーンが5つあります。
1つ目は冒頭で崖に訪れた時の足音を聞かせるため、2つ目は同じく崖から去る時の足音を聞かせるため。
崖から去る時、つまりシナリオを終了の余韻を持たせるために2.0秒挿入しました。
3つ目は冒頭、縛り首が揺れた後「縛り首は静かに揺れている」のメッセージの後、「崖の下に居るのは誰か?」
のメッセージの前に0.7秒。
これは何のための時間かというと、アニメのOPで言う、歌部分が途切れてタイトルが出てるところ・・・
みたいなイメージです。タイトル出てないけど。
もしくはいきなりアニメが始まって、一呼吸後、OP!みたいな。はじまるぞ~!って心意気です。
4つ目と5つ目は冒険者がローブの男の短剣を弾き飛ばす効果音の前に1.0秒。
これも効果音を聞かせるため、耳を澄まさせる時間です。気を引いて注目させる効果です。
先生が急に黙って「みなさんが静かになるまで○分かかりました」って言うやつ。
カードワースってメッセージ(クリック)が途切れたら次の場面、展開って進んで行きますよね。
このシナリオだと話の途中はメニューカードを1つも表示していないので、すぐに次のメッセージが出ないと
「あれ?止まっちゃった?」ってなるかと思うんです。
なので、より注目させる効果が発揮されてるのでは、と思います。
空白時間を作らないとカードワースの処理は一瞬で終わり、次、次、と間髪入れずイベントが流れていきます。
シナリオを開始早々、足跡の為の0.2秒+縛り首のアニメにかかる3.0秒、あわせて3.2秒の空白時間。
その時間はメッセージも出さず、メニューカードもない画面で、足音と風の音に耳を澄まさせ、
このシナリオの中心要素、かすかに揺れ動く縛り首を「見せつける」時間です。
兎にも角にも徹底的に雰囲気重視にしたかったので、先手必勝でブレイヤーを雰囲気に取り込めたらいいなぁ と
思いながら・・・
「崖の下に居るのは誰か?」のメッセージの前の0.7秒を決めるのには結構悩みました。